2012年5月19日土曜日

消費者庁,コンプガチャは景表法違反との正式見解発表。

2012年5月18日,消費者庁はいわゆる「コンプリートガチャ」(以下,コンプガチャ)が景品表示法で規制されている「カードあわせ」(絵あわせ)に
相当するとの正式見解を発表した。

すでにソーシャルゲームの業界団体は,5月いっぱいでコンプガチャの廃止を表明しているが,
一般のオンラインゲームにどの程度影響があるのかなどは不明である。
野放し状態であったソーシャルゲーム業界に消費者庁の手が入ったということで,今後の動向が注目される。

以下、消費者庁の発表原文を掲載する。

「カード合わせ」に関する景品表示法(景品規制)上の考え方の公表及び景品表示法の運用基準の改正に関するパブリックコメントについて 

携帯電話ネットワークやインターネット上で提供されるゲーム(以下「オンラインゲーム」といいます。)において、「コンプリートガチャ」又は「コンプガチャ」(以下「コンプガチャ」といいます。)などと呼ばれるキャンペーンないしイベントが開催されることがあります。 このたび、「コンプガチャ」に関する景品表示法(景品規制)上の考え方を「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について」(別添1)記載のとおり公表するとともに、当該考え方に基づき作成した「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」(昭和52年公正取引委員会事務局長通達第4号)改正案(別添2)をパブリックコメントに付することとしましたので、お知らせします。 なお、「オンラインゲームの『コンプガチャ』と景品表示法の景品規制について」(別添1)では、「ガチャ」や「コンプガチャ」といった用語を用いながら解説を進めていきますが、これらの用語は、理解しやすいよう、オンラインゲームの中で一般的に使われている用語を代表例として用いているものです。したがって、以下で解説する仕組みと同様の仕組みで、「ガチャ」や「コンプガチャ」とは別の用語を用いるものについても、別添1の4に記載された考え方は同様に当てはまりますので、御注意ください。 

オンラインゲームの「コンプガチャ」と景品表示法の景品規制について

1 はじめに 
以下では「ガチャ」や「コンプガチャ」といった用語を用いながら解説を進めていきますが、これらの用語は、理解しやすいよう、携帯電話ネットワークやインターネット上で提供されるゲーム(以下「オンラインゲーム」といいます。)の中で一般的に使われている用語を代表例として用いているものです。したがって、以下で解説する仕組みと同様の仕組みで、「ガチャ」や「コンプガチャ」とは別の用語を用いるものについても、下記4に記載された考え方は同様に当てはまりますので、御注意ください。 

2 「ガチャ」とは? 
ここでいう「ガチャ」とは、オンラインゲームの中で、オンラインゲームのプレーヤー(以下「消費者」といいます。)に対してゲーム中で用いるキャラクターやアイテム(以下「アイテム等」といいます。)を供給する仕組みのことです。駄菓子屋の店頭などに設置されることが多い「ガチャガチャ」であるとか「ガチャポン」などと呼ばれる自動販売機(以下「ガチャガチャ」といいます。)になぞらえて「ガチャ」と呼ばれることが一般的です。 「ガチャガチャ」では、消費者が「ガチャガチャ」に硬貨を投入した後にダイヤルを回転させると、「ガチャガチャ」にあらかじめ蓄えられたカプセル入りの玩具などが一つ提供される、という販売形態をとることが一般的です。そのとき、「ガチャガチャ」に蓄えられた多くのカプセル入り玩具のうちどの玩具が消費者に供給されるかは偶然に支配されており、消費者がどの玩具を購入するかを自由に選択することはできません。 「ガチャ」も、「ガチャガチャ」と同じような仕組みによって、オンラインゲーム上で用いるアイテム等を消費者に供給します。つまり、消費者は、「ガチャ」を通じて入手するアイテム等を自由に選択することはできず、どのアイテム等を入手できるかは、消費者からみれば、偶然に支配されています。 なお、「ガチャ」は、無料で行うものと、有料で行うものがあります(以下後者を「有料のガチャ」といいます。)。 

3 「コンプガチャ」とは? 
「コンプガチャ」は、「完成させる」とか「完了する」といった意味を持つ「コンプリート (complete)」という英単語と「ガチャ」の語を組み合わせた造語です。「コンプガチャ」は、一般的には、「ガチャ」によって、例えば、特定の数種類のアイテム等を全部揃える(「コンプリート」する、又は「コンプ」する)と、オンラインゲーム上で使用することができる別のアイテム等を新たに入手できるという仕組みです。この別のアイテム等は、その希少性から、「レアアイテム」などと呼ばれたりします。 上記2のとおり、「ガチャ」でどのアイテム等を入手できるかは偶然に支配されていますから、特定の数種類のアイテム等を全部揃えるためには、「ガチャ」を何度も行わなければならないことが一般的です。

4 景品表示法上の問題点 
(1) 景品規制の概要について 
ア 景品表示法上の「景品類」の定義について※1
景品表示法上の「景品類」については、同法第2条第3項において、次のように定義されています。 

第二条
3 この法律で「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を含む。以下同じ。)に付随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。


内閣総理大臣は、この規定に基づき、「不当景品類及び不当表示防止法第2条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年公正取引委員会告示第3号。以下「景品類指定告示」といいます。)※2 第1項において、次のように「景品類」に当たるものを指定しています。

1 不当景品類及び不当表示防止法(以下「法」という。)第二条第三項に規定する景品類とは、顧客を誘引するための手段として、方法のいかんを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、次に掲げるものをいう。(略)※3

一 物品及び土地、建物その他の工作物

二 金銭、金券、預金証書、当せん金附証票及び公社債、株券、商品券その他の有
価証券

三 きよう応(映画、演劇、スポーツ、旅行その他の催物等への招待又は優待を含
む。)

四 便益、労務その他の役務



イ 懸賞による景品類の提供に関する制限について 景品表示法第3条は、次のように規定しています。 

第三条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。


内閣総理大臣は、この規定に基づき、「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公正取引委員会告示第3号。以下「懸賞景品制限告示」といいます。)※4 を定めています。 「懸賞」とは、抽選やじゃんけんなどの偶然性、作品などの優劣、クイズなどへの回答の正誤の方法によって景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいいます(懸賞景品制限告示第1項)。懸賞による景品類の提供は、原則として、景品類の最高額や総額によって制限されていますが、例外として、「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供」は、景品類の最高額や総額にかかわらず、提供自体が禁止されています(懸賞景品制限告示第5項)。この方法は「カード合わせ」と呼ばれます(「絵合わせ」、「字合わせ」と呼ばれることもあります。)。 このような方法による景品類の提供が全面禁止されているのは、その方法自体に欺瞞性が強く、また、子ども向けの商品に用いられることが多く、子どもの射幸心をあおる度合いが著しく強いためです。 

(2) 「コンプガチャ」に関する景品表示法上の考え方 
ア 景品表示法上の考え方 


「コンプガチャ」は、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法に該当し懸賞景品制限告示第5項で禁止される景品類の提供行為に当たる場合があります。


イ 解説 
(ア) 有料のガチャ自体への景品規制の適用について 
一般消費者は、事業者への金銭の支払いと引き換えに有料のガチャを行い、アイテム等何らかの経済上の利益の提供を受けています。つまり、有料のガチャによって一般消費者が得ている経済上の利益は、一般消費者と事業者間の取引の対象そのものであるといえます。言い換えれば、有料のガチャによる経済上の利益は、事業者が有料のガチャとは別の取引を誘引するために、当該取引に付随させて、一般消費者に提供しているものではありません(景品類指定告示第1項。前記4(1)ア参照)。 したがって、有料のガチャによって一般消費者が何らかの経済上の利益の提供を受けたとしても、それは景品表示法上の景品類には該当せず、景品表示法の景品規制は及びません。 

(イ) 「コンプガチャ」で提供されるアイテム等の景品類該当性について 
有料のガチャを通じてアイテム等を提供しているオンラインゲームの場合、「コンプガチャ」によって提供されるアイテム等は、有料のガチャで得られた異なる種類の複数のアイテム等を揃えることを条件にして提供されるものであり、これは有料のガチャによってアイテム等を購入することを条件として当該アイテム等とは別のアイテム等を提供するものですから、「コンプガチャ」で提供されるアイテム等は、有料のガチャという取引に顧客を誘引するための手段として、当該取引に付随して提供されるものに当たります。 つぎに、「コンプガチャ」で提供されるアイテム等は、オンラインゲーム上で敵と戦うキャラクターであったり、プレーヤーの分身となるキャラクター(いわゆる「アバター」と呼ばれるものです。)が仮想空間上で住む部屋を飾るためのアイテムであったりと、様々ですが、いずれにしても、それによって消費者が、オンラインゲーム上で敵と戦うとか仮想空間上の部屋を飾るといった何らかの便益等の提供を受けることができるものであることから、「便益、労務その他の役務」(前記4(1)ア参照)に当たります。 また、「コンプガチャ」で提供されるアイテム等は、その獲得に相当の費用をかけるといった消費者の実態からみて、提供を受ける者の側から見て、金銭を支4 払ってでも手に入れるだけの意味があるものとなっていると認められるので、「通常、経済的対価を支払って取得すると認められるもの」として、「経済上の利益」(前記4(1)ア参照)に当たります5。 以上をまとめると、消費者が行う有料のガチャは、オンラインゲームを提供する事業者と消費者との、オンラインゲーム上のアイテム等に関する取引と認められるところ、有料のガチャを通じて特定の数種類のアイテム等を全部揃えることができた消費者に提供されるアイテム等は、有料のガチャという取引に消費者を誘引するための手段として、当該取引に付随して提供される経済上の利益であって、「便益、労務その他の役務」に当たるもの、すなわち、景品表示法第2条第3項の「景品類」に該当します。 

(ウ) 「コンプガチャ」によるアイテム等提供行為の懸賞景品制限告示第5項該当性
について 
数種類のアイテム等は、互いに種類が異なるものですから、端末の画面上に表されるそれぞれのアイテム等を示す図柄はそのアイテム等を他の種類のアイテム等と区別する印であり、こうした端末の画面上に表されるアイテム等を示す図柄も、懸賞景品制限告示第5項にいう「符票」に該当します。 
したがって、上記のような形で、オンラインゲームの中で有料のガチャを通じて特定の数種類のアイテム等を全部揃えることができた消費者に対して別のアイテム等を提供することは、懸賞景品制限告示第5項にいう「・・・二以上の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供」に該当し、同項の規定によって禁止されます。 

※1「景品類に関するQ&A」 Q1参照。 

http://www.caa.go.jp/representation/keihyo/qa/keihinqa.html#Q1 

※2 http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_6.pdf

※3 ただし、正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益及び正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まないものとされています。 

※4 http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_8.pdf


「『懸賞による景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」改正案新旧対照表 

改正案現行(昭和52年4月1日公正取引委員会事務局長通達第4号) 
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準

1~3(略)
4 告示第五項(カード合わせ)について
(1) 次のような場合は、告示第五項のカード合わせの方法に当たる。
携 帯 電 話 ネ ッ ト ワ ー ク や イ ン タ ーネット上で提供されるゲームの中で、
ゲームのプレーヤーに対してゲーム中で用いるアイテム等を、
偶然性を利用して提供するアイテム等の種類が決まる方 法 に よ っ て
 有 料 で 提 供 す る 場 合 であって、特定の数種類のアイテム等を
全部揃えたプレーヤーに対して、
例えばゲーム上で敵と戦うキャラクターや、
プレーヤーの分身となるキャラクター
(いわゆる「アバター」と呼ばれるもの)が
仮想空間上で住む部屋を飾るためのアイテムなど、
ゲーム上で使用することができる別のアイテム等を提供するとき。
(2)(略)
5~12(略)
「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準

1~3(略)
4 告示第五項(カード合わせ)について

(1)~(3)(略)
5~12(略)

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